システム思考に基づく熱流体のイノベーションを目指す

当研究室においては,システム思考に基づく「熱流体システムデザイン」を研究領域としています.

身のまわりの様々なものは,複数のコンポーネントが組み合わさったシステムとして存在し,
システムを構成するコンポーネントは,システムを成立させるための様々な強みを有する.

熱流体現象は,機器単体の性能を決めるだけでなく,エネルギー変換・搬送・制御・構造・材料・環境条件と結びつきながら,最終製品の性能・信頼性・安全性・省エネルギ性を規定します.したがって「熱流体」は,部品レベルの現象理解に留まらず,システムとしての設計問題として捉える必要があります.

ここでいう「システム」とは,複数の要素(コンポーネント)およびサブシステムが相互作用しながら,ある目的(性能・効率・耐久・快適性など)を実現する集合体です.例えば電車の駆動系は,集電(パンタグラフ)・配電・電力変換(インバータ)・電動機(モータ)・機械系が連動し,全体として走行性能・効率・信頼性が決まります.自然界の生物システムも同様に,複数の器官運動とセンシング(眼・側線など)が協調し,環境適応を含む目的機能を実現しています.

システムの最終性能は,要素性能の単純な足し合わせではなく,要素間の結合(接続・制御・境界条件)と相互作用によって決まります.したがって,研究としては

  • システム全体の性能を引き出す 全体最適化(統合設計・全体適正設計)
  • 性能を支配する要素の能力を押し上げる 要素性能最大化(現象理解・設計則化・高性能化)

の両輪を回すことが不可欠です.

さらに,長い進化の過程で淘汰を経て成立してきた自然界のシステムには,限られた環境や生息条件のもとで目的機能を実現するための合理的な「組み合わせ」と「仕組み」が内在している可能性があります.自然界のシステムメカニズムを工学的に解明し,設計知へ翻訳することは,カーボンニュートラルを含む次世代の高効率システム設計に資する有力なアプローチです.

福江研究室では,システム思考に基づき「熱流体システムデザイン研究」を次の二つの視点で推進します.

1)システム視点:全体性能を規定する設計問題として捉える

  • エネルギ・熱・流れ・制御・構造の結合を前提とした統合設計
  • 境界条件・運用条件・制約(コスト,安全性,信頼性)を含めた性能設計
  • 上流設計(要求→仕様→構成)と設計探索(トレードオフ,感度,ロバスト性)の体系化
  • 解析・実験・モデル(例:1DCAE・MBD,CFD,計測)の役割分担と統合

2)要素視点:支配因子の同定と高性能化

  • 伝熱・流動・混相・脈動・噴流などの現象解明とモデル化
  • 熱抵抗・圧損・冷却限界・不安定性など,設計上のボトルネックの設計則化
  • 材料・接合・表面構造・流路構造など,要素技術の性能最大化
  • 実機条件で再現できる試験系・評価法の構築

自然に学ぶ:バイオミメティクスの位置づけ

自然界の機能発現は「要素」よりもむしろ「システム(組み合わせと制御)」として現れることが多く,福江研究室では,機能を実現するメカニズムを解明し,設計パラメタ・設計ルールへ翻訳することで,工学システムの高効率化に接続します.
 

熱流体システムデザイン研究の推進における3つの柱

本研究室は,ミッション「熱流体システムデザインのフロンティアを開拓し,持続可能で感動あふれる社会の創成に貢献する」を掲げています.このミッションの実現に向け,最終製品の性能(機械としての性能に加え,環境性能を含む)を規定する「熱流体システム」を研究対象とし,「システム全体」と「動作を実現する構成要素(より小さなサブシステムを含む)およびその組み合わせ」という二つの視点から,より小さなエネルギ消費で所望の機能を実現する,ものづくりのデザインを追究します.

この目的のために,研究の起点(テーマの源泉)を以下の3点に整理し,体系的に推進します.

① 実製品の熱流体課題を捉え,本質を分析し,最適化
② 自然界の熱流体システムの謎を紐解き,次の熱流体制御へ
③ 「要素」と「全体」を繋ぎ,新たなシステムを創成する熱流体設計法の構築

研究室の研究の3つの柱と,それぞれの相互関係

なお,これら3つの柱は研究の起点(実製品 / 自然界 / 設計法)を示すものであり,いずれの柱も「システム全体」と「構成要素およびその組み合わせ」という2つの視点を往復しながら推進します.すなわち,

 ・ 実製品や自然界に現れる課題・機構を,システムとして捉えて全体性能の成立要因を明らかにし,
 ・ あわせて要素・サブシステムの支配因子を同定して設計知へ翻訳する

ことで,熱流体システムデザインの新領域を開拓します.

これら3つの柱の基盤には,「研究室の理念」で述べる3つの研究思想,すなわち「自然界の機能と進化に学ぶ」「スケールシフト学」「1DCAE(まずは定義)」があります.本研究室では,各柱に関する個別深化研究を進めると同時に,複数の柱を融合させた横断型研究を企画・推進することで,システム思考に基づく熱流体の新領域研究を開拓し,ミッションの達成につなげます.

以上の背景のなかで推進する具体的な研究テーマ

 以上の研究領域の考え方を基本として,福江研究室では,特に4つのグルーピング(バイオミメティクス,魚の泳動作,熱流体設計法,電子機器の冷却およびサーマルマネジメントの標準化)に運営上分類される研究テーマを取り扱っています.詳しくは「研究テーマ」ページで説明します.

具体的なテーマは「研究テーマ」で紹介しています