研究室での活動を通じて,みなさんに得てもらいたい成長像について,簡単にですが説明します.

 研究活動を通じて,下記のような研究者・技術者としての地盤を固めてもらえるような研究室運営を行うと同時に,それぞれの経験を獲得できるよう研究室内でのプログラムを準備しています.
 詳細については研究室見学時に説明しますので,ぜひ足を運んでみてください.

[1] 研究室で何をするのか?
[2] 学部での活動における達成目標
[3] 修士以降の活動における達成目標
[4] 熱流体システムデザイン研究を通じて期待したい成長像
[5] ふくえけんにおける「学びの戦略」
  → 熱流体の研究者・技術者に対する研究室の学びの中での考え方
[6] ふくえけんにおける「学びのシステム」の一例

[1] 研究室で何をするのか?

学生のみなさんにとって,学部で研究室に配属になった後の(大学院からの配属者を除く),研究室における最大の活動目標は,卒業要件としての必修科目であるプロジェクトデザインⅢの単位取得だと思います.さらに,大学院においては,専修科目の履修を通じ,修士論文の執筆および修士の学位を取得することが目標だと思います.

みなさんにとっての研究室とは,そのために所属する実動機関であるといえます.したがって,みなさんは研究室において,少なくともその実現に向けた活動を実施することになります.

[2] 学部での活動における達成目標

では,学部での活動における達成目標はどのようなものでしょうか.

学部でのプロジェクトデザインⅢのシラバスを確認すると,まず学習・教育目標として

・ 社会的に有用で高品質な製品群を研究,開発,設計,製造するために必要とされる技術対応
  新たなメカニズムの創出を目指し機械工学関連分野の問題発見・解決が自らの手で行える能力の付与
・ 社会(特に地域社会)との連携の重要性の学習

が期待され,それを前提として,達成レベルの目安が示されています.これを研究室での活動を通じ実現することがプロジェクトデザインⅢでの活動の目指すところになります.

[3] 修士以降の活動における達成目標

さらに,大学院に進学し,当研究室で専修科目:動力・エネルギー工学研究を通じ修士論文を纏めるときには,次のようなことを実現することが求められます.

修士においては,学部におけるプロジェクトデザインⅢでの活動で得た経験・知識・知恵をもとに,さらに

・ エネルギ変換分野における技術開発や基盤研究を支える能力
  (環境負荷低減,効率最大化,LCAの考え方も踏まえた統合的なプロジェクト遂行能力)
・ 機械基盤分野の高度知識を十分に得た上で,機械技術分野で幅広く活動するための
  工学設計過程的研究アプローチを重視した高い応用能力(工学倫理等を含む)

が得られることが期待されます.その達成度を評価する一環としての,一定の研究成果の獲得(学会発表の実現)と,高度専門技術者あるいは研究者として工学倫理等に関する理解・応用力の獲得を目指すことになります

[4] 熱流体システムデザイン研究を通じて期待したい成長像

 研究領域でお話ししたように,当研究室は,特に「熱流体システムデザイン」を専門としており,特に「研究領域」においてもお話ししたとおり「電子機器の冷却を主とした実製品の熱流体設計(顧客価値の向上・革新)」や,「バイオミメティクスやメカノエソロジーを基盤にした分野横断型熱流体研究」「製品設計を高度化し設計者の価値を最大化するための熱流体設計手法の創成」を土台とした研究領域をもっています.その土台の上で,様々な外部のコラボレータ(兼・ステークホルダー)との共創により,研究室のミッションの実現に向けた「熱流体システムデザイン研究」を,理論,実験,1D-CAE,3D-CAE を融合させて推進しています.

 活動の根底にあるミッション・ステートメント「6C」に基づき,プロジェクトデザインⅢないしは動力・エネルギー工学研究の活動を通じ,学位論文研究において実現してほしいメンバの成長像について,次のように定義しています

① ひとりの工学者として,知識を知り,知恵を学び,工学倫理観を備え,
  自立してプロジェクトを推進できる研究者・技術者

 これまでの座学の知識で得た,機械工学の基礎的な知識を軸に,プロジェクトのひとつの形としての研究活動を進める上で,知識を活用して目の前の課題を解決する知恵を生み出す能力を身につけます.工学倫理を備え,知識と知恵を適切に運用しながら,自立して自らの研究課題を推進できる能力を獲得します.

② 立場の異なるコラボレータと共創するための考え方を知り,
  横断型プロジェクトに応用し,実践できる技術を持つ研究者・技術者

 研究領域①でも説明したように,ものづくりはひとつの分野だけでは完結しません.機械工学者には,異なる分野や立場の異なるコラボレータと協働して,トレードオフ問題と向き合いながら,ものづくりを変えていくことが期待されます.当研究室で得られるであろう,多数のコラボレータとの協働の機会を活用してもらい,横断型プロジェクトにおけるコラボレータとの共創を実現するためのコミュニケーション技術を学んでもらい,それを実践できる能力を養ってもらえればと思います.

③ 実践的研究や,領域の第一線の研究者・開発者・技術者との交流や共創により,
  社会から求められるレベル感を理解しながら研究推進できる研究者・技術者

 ものづくりが横にある実践的研究を進める中で,共同研究先のみなさまや,OB・OG,学会や勉強会に参加の他大学の学生さんや先生方など,いろいろな領域の第一線で活躍する研究者・開発者・技術者との意見交換や議論の機会が得られます.これらの機会を活用することで「社会から求められる」レベル感を知ることができると思います.これを活かすことで,「期待される達成度」を学びながら,PDCAを回し続けられる研究者・技術者に成長してもらえることと思います.このレベル感の理解は,研究室を巣立った後で大いに役立つと思います.

④ 機械の機能を司る現象の本質を理解し,各種実験,1D-CAE,3D-CAEも含む
  各種ソリューションを適切に使い分け,先進工学課題に対応し,
  次のものづくりステップを開拓できるパイオニアになる.

 工学的課題に対して,解決するためのアプローチはひとつではありません.場合により,複数の手法を取捨選択しながら,最適なかたちでプロジェクトを進めていく能力が必要になります.ふと,別のアプローチに切り替えた瞬間に課題がクリアになることも多々あります.適切なソリューションを選択するために必要なことは,「いま目の前の課題の本質が何で,解決のために何を優先すべきか」ということを判断できるかどうかです.当研究室のひとつの特徴は,各ソリューションを適宜取捨選択する基盤があるということでもあり,これを活かしてパイオニアになるための基礎的な経験を積んでもらえればと思います.


[5] ふくえけんにおける「学びの戦略」

プロジェクトデザインⅢにおける「学びの戦略」

ふくえけんにおいてターゲットとしている学びの成長像は,学部のプロジェクトデザインⅢで期待される達成目標と次のように結びついています.

・ 社会的に有用で高品質な製品群を研究,開発,設計,製造するために必要とされる技術対応
  新たなメカニズムの創出を目指し機械工学関連分野の問題発見・解決が自らの手で行える能力の付与
    → ① が強く該当します.
・ 社会(特に地域社会)との連携の重要性の学習
    → ② が強く該当します.コラボレータとの連携のプロセスにより学びます.

特に学部のプロジェクトデザインⅢでは,特に①,②について重きを置いた指導を行い,
・ 知識を知恵に変えるためのディスカッション能力,考察能力
・ 立場の異なるコラボレータとの連携のためのコミュニケーション力,工学設計能力
を持ち,ものづくりにおける工学課題に即応性を持って対応出来る「実践型の機械屋」になってもらうことを目指します.その課程の中で,客観的な視点で,自分のプロジェクトの目標を定め,推進プロセスのPDCAサイクルを回すことが出来るように,③,④も触れてもらい,視野の拡大を狙います.

以上をまとめたのが下記の「学部における学びの戦略」および「研究室における学びのコンテンツ」の関係であり,この考え方に則って研究室での活動を進めていきます.

大学院における「学びの戦略」

Q&Aでもお話ししたとおり,昨今の工学系は大学院の進学率が高く,機械系においても,大学院で学んだ人材に対する期待が非常に大きい現状があります.

修士においては,解のない工学課題に,他の分野のコラボレータとも共創しながら,創造的な領域の課題に対しても果敢に挑戦できる,高度専門技術者あるいは研究者(創成型の機械屋)になれるような研究室における学びを実践していきます.動力・エネルギー工学研究での学びの目標と結びつけると,

・ エネルギ変換分野における技術開発や基盤研究を支える能力,機械基盤分野の高度知識
  (環境負荷低減,効率最大化,LCAの考え方も踏まえた統合的なプロジェクト遂行能力)
  → ① の,より応用的な知識の獲得,および ④ の体得で実現します.
・ 機械技術分野で幅広く活動するための工学設計過程的研究アプローチを重視した高い応用能力
  (工学倫理等含む)
  → ② もさることながら,③ の視点で,学会での討論や共同研究先との連携を通じて深く学びます.
   工学者としての「人間力」の育成も図ります.

特に②~④について,研究室内での討論による短期PDCAサイクルの評価はさることながら,学会発表や共同研究先での討論会を通じた,中期的なPDCAサイクルの評価,(可能であれば論文投稿や)学位論文を目指した長期的なPDCAサイクルの評価という,3つの視点でのPDCAサイクルを常に回しながら,研究力・共創力・プロジェクト推進力を育成します
 また,ふくえけんでB3から大学院修士まで一貫して研究を行うメンバについては,「Hop – Step – Jump」の3段階のステップでの研究力・共創力・プロジェクト推進力を育成することを目標に,大学院博士前期課程までをひとつの教育プログラムとして考え,創成型技術者として貢献できる基礎を獲得することを目標にして指導を行っていきます.その場合には,
 ・ B4:「Hop」→ 学部で学ぶことが期待される技術対応,問題発見・解決,連携それぞれの能力を
   育成しつつ,創成型技術者としての「基盤」を築く.
 ・ M1:「Step」→ 学部のときに築いた基盤から深化させ,機械工学分野における専門性を高め,
   研究の先鋭性を獲得していくためのプロセスを遂行し,機械屋としての「武器」を磨く.
 ・ M2:「Jump」→ 自身のプロジェクトを,外部評価を通じた他者との協働や共創により
   客観的に評価し,高度専門技術者あるいは研究者に必要な客観的視点やレベル感を獲得しながら,
   自立した創成型技術者として成長する.

という3段階のステージにしたがった教育指導を行います.なお,大学院から研究室での活動を始めるメンバについては個別に到達目標を議論の上,運営していきます.

ラーニングストラテジー(戦略的学び)

 これらの学びのステージは,ふくえけんにおける学びの「土台」のひとつである,ラーニングストラテジー(戦略的学び)に則っています.
 ラーニングストラテジーは,オックスフォード大学のマイケル・オズボーンが発表した「2030年の需要が高いスキルと知識」で1位であったキーワードで,「様々な状況において生ずる問題に気づき,それを解決する他面に必要な知識や技能の学びを創出するスキル」です(出典:田中孝治・浦正広 編著,学都圏 “いしかわ” 創成 ① ラーニングストラテジーを学ぶPBL構築への挑戦 (2020),デザインエッグ).
 機械屋としてのキャリアデザインの中で,大学や大学院の学びはその基盤になるものですが,日進月歩のものづくりの世界,AI によるものづくりの環境の変化,さらには「国境の無いものづくり競争 & 共闘 の多発」を踏まえると,その先のキャリアパスの中で,大学や大学院の学びだけで補えないことが多々発生すると思います.「共創研究」を基盤とする当研究室ですので,これらの状況の中で,研究室メンバにはただ機械の知識や知恵を学んでもらうだけではなく,自身のキャリアデザインの中で有用なラーニングストラテジーについても考え,実践する経験を積んでもらえればと思っています.様々な PDCA の過程の中で,自身の機械屋としての「ラーニングストラテジー」:キャリアパスの中での様々なアクションを考え,実践できる人材として成長してもらえることを期待しています.

熱流体の研究者・技術者

 なお,当研究室の教育目標と考え方は(修士は動力・エネルギー工学研究のシラバスを実現することが目標になりますので,そうとも言い切れませんが),必ずしも熱流体分野の研究者・技術者に限定したものではなく,熱流体システムデザイン研究を通じた,機械工学に基盤のある研究者・技術者のひとりとしての普遍的な成長を期待しているものです.そのひとつのきっかけとして,研究室での熱流体システムデザイン研究がある,とイメージしてもらえればと思います.

 そのうえで,もし熱流体システムデザインに限らず,熱流体工学分野に興味が深まれば,ぜひ分野を極めてもらえればと思います.

 ざっくり計算すると,日本国内の機械系大学で,熱流体工学を基盤として活動している研究室は全体の 3 % 程度(流体と伝熱の両者を広く取り扱う研究室が全体の 10 %)であり,学生の時代に熱流体の知識と知恵に触れている人材は希少と表現することも出来ます.
Q&A にも少し記載しましたし,研究室見学のときにもお話ししますが,当研究室の卒業生・修了生の多くが,熱流体が関連する分野や業界に進んでいるのは確かにあります)

 熱流体工学の専門性は,持続可能な社会に通じるものづくりを実現する上で分野を問わず必要であり,需要の高い分野です(かつ,ものづくりにおける最後のボトルネックとしてだいたい現れるのが「熱に対する対応」です).ぜひ,研究室で様々な経験を積んで,広範な視野をもって課題に挑める技術者・研究者へ成長することを願っています.

[6] ふくえけんにおける「学びのシステム」の一例

 以上の学びの目標を実現するために,学びの戦略マップに記載がある具体的な取り組みを準備しながら研究推進していきます.ここでは,そのなかの一部について紹介します.

プロジェクトゼミナール

 年に1~2回程度実施する研究室内のイベントです.定期的にものづくりに携わっておられる方をお招きして,実際のものづくりに関する話題提供を頂いたり,実在の課題を解決するためのコンセプトを,垣根を越えて議論し共創することにチャレンジします.時には実地で製品の分解や設計,時にはベンチャー討論会など,様々な視点で機械屋としての視野拡大を狙います.
 ・ 2019年に実施したときの例(記念すべき第1回,Guest:電子機器メーカのエンジニアのみなさま)
 ・ 2025年に実施したときの例(Guest:モデルベースデザインのリサーチャー)

秋の中間報告会(研究室OBOG会併催)

 研究室における定例報告会や中間報告会は随時実施していますが,その中でも,例年,秋だけは「外部公開型の中間報告会(ふくえけん 秋の公開シンポジウム)」として実施しています(一例として,2023年度は本多の森会議室2024年度は扇が丘パフォーミングスタジオ2025年度は金沢市文化ホール 大会議室で実施しています).
 これは,研究室のOBOGや,共同研究先のみなさまにもご参加頂き,それぞれの領域の第一線でご活躍のみなさまからのご指導を仰ぐことにより,自身のプロジェクトの歩みを客観的に評価し,次のステップをより有効に考えるきっかけとして運営しているもので,研究室を巣立ったOBOGのみなさまや共同研究先のみなさまのご協力により実施しています.
 OBOGのみなさまから,就職してからの現状やエピソードをたくさん聞けるかもしれません.キャリアデザインの視野を広げるいいきっかけにもなると思います.

学会発表(特に大学院修士は国際会議での発表を推奨)

 研究活動の成果に関する中期の PDCA を正しく回し,期待される成長像を実現する上で,各自の研究成果の外部評価は重要なプロセスであり,当研究室では積極的な学会発表を推奨しています.特に大学院修士に関しては「最低限1回の学会発表(による外部評価の取得)」が必要ですが,より広い視野を獲得する視点で,国際会議での発表を推奨しています(研究成果に依りますが,可能な限り修士1年の段階で国際会議で発表出来るようにリーディングしています.この場合,学部4年生での研究活動の充実が,間に合わせるための必要条件(修士1年の時に国際会議に出そうと思ったら,早ければその1年前に申込が必要)です).国際会議の旅費に関しては補助がありますので,ぜひチャンスを掴んでください

 <M1で国際会議の発表を実現した事例>
 ・ 2026年度(日本・石垣島,予定)
 ・ 2025年度(日本・沖縄)
 ・ 2024年度(アメリカ・サンノゼ)
 ・ 2023年度(日本・熊本)
 ・ 2021年度(オンライン)
 ・ 2020年度(オンライン)

他研究室とのコラボレーション

 他研究室とのコラボレーションでの発表会やゼミなどもご一緒させて頂き,ご指導を頂いています.
 例年実施の一例として,杉本研究室とは毎夏の中間報告会(ポスター)を,長沼研究室とは合同ゼミをご一緒させていただいています.メディア情報学科・浦先生,経営情報学科・北川先生とは共同で異分野横断型ものづくり教育に関する科研費プロジェクトを実施しており,様々な分野のお話を聞きながら視野を広げられる機会があります※.
(先生方のご高配に重ねて御礼申し上げます.引き続きご指導のほど,よろしくお願い申し上げます)
 ※ 科研費 24K0631521K02869 の補助を受けており,記して謝意を表します.

そのほか,研究室運営などの詳細な情報は,研究室見学や配属後の専門ゼミで説明します.